
お米は、私たち日本人にとってなくてはならない。全国津々浦々誰もが納得することでしょう。しかし近年では若者のコメ離れが話題にされたり、農家の高齢化や後継ぎ不足の問題など、とても将来が不安になる話が多いのも事実です。そこで、本日は日本のお米の未来について考えてみたいと思います。
コメから離れたのは若者なのか?
テレビや新聞などメディアを眺めていると、まるで「最近の若者」が米をあんまり食べなくなったかのような印象を受けてしまうかも知れません。確かに消費量の減少については、家庭の食卓や飲食店での主食の選択肢の幅は昔より大きく広がったのは事実ですし、核家族化が定着し、何世代もが同時に同じ釜の飯を食う必要がなくなったことで、ご飯を炊くより手軽にパンや麺で済ませるという光景はあまりにも日常的です。しかも人口そのものが激減しているのですから当然のことです。

戦後早々始まった「元祖コメ離れ」
しかし意外に思う方もいるかもしれませんが、「元祖コメ離れ」は近年の若者からではなく、戦後まもなくの大人たちによって起こされたできごとでした。学校給食にパンが導入されたことは大きいですが、それだけでなく、当時の日本人の言論人・文化人の中には、戦勝国のアメリカに倣えとばかりに、米を食べていると頭が悪くなる、逆に小麦を食べれば体力も付いて頭脳も優秀になるなんてことを堂々と言う人々もいたんです。信じられませんよね。牛乳(導入当初は脱脂粉乳)やバターも同じように日本で常食され始めるようになりましたが、それらはアメリカから払い下げられたものです。そういったデカい買い物を強いられる一方で、当時の日本政府は国内産業を守るため、また二度と日本国民を飢えさせないため、食糧管理制度や農地改革といった政策も打っていました。
需要と人口激減以外にも問題が!
ところが、国の政策意図と生産者の要望が必ずしも常に一致していたわけではありません。そのため、食糧難に備えるはずだった法整備等が逆に「コメ余り」を生んだり、人気の食用ブランド米以外の業務用や肥料用のコメ不足などを招いた他、近年では2018年の種子法廃止により、9割以上のコメ生産者を支える重要な役割を担う種籾専門の農家に対する国からの補償がなくなり、存続は勿論のこと、その製法の伝統継承も危ぶまれています。
ちなみに日本の食品自給率って本当に低いの?
良くニュースなどでは、日本の食品自給率は低いということが言われますが、実はここにはからくりがあるのをご存じですか?自給率の計算方法には「カロリーベース(国民一人当たりの1日の国産カロリーと全体のカロリー消費量から計算)」と「生産額ベース(生産額と消費額から計算)」の二通りがあり、前者で計算した場合、日本の食品自給率は恐ろしく低いという結果になります。
しかしちょっと考えてみて欲しいのですが、普段スーパーで食品を買い物をする時、そこまで輸入品ばかりであふれかえっているでしょうか?実際の令和3年度の生産額ベースの自給率を品目別に見ると、米98%、さつま芋95%、鶏卵97%、鶏肉65%、海藻類69%、きのこ類89%といった具合です。逆に自給率が低い品目は、小麦17%、大麦12%、大豆7%、油脂類14%などです。

お米の自給率の紆余曲折
1960年代後半以降約60年間に渡り、自給率ほぼ100%を保ち続けているお米ですが、明治時代後半から大正・昭和初期までは、不作や人口激増で輸入に頼っていましたし、反対にそれ以前の明治時代初期では、お米はイギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどへ向けた花形輸出品でした。日本産の美味しいお米がいつも当たり前にたくさん食べられるのは、工業化や品種改良、制度改革など、数えきれないほどの様々な努力のうえに成り立っているのです。そしてその最たるものはやはり、「八十八」の作業工程があると言われている、手間暇を惜しまない実際の生産農家さんたちの努力です。「米」という字は、この「八十八」を一文字にしたものだと言われています。
また、「一粒のお米には7人の神様が宿っている」と言われています。神様の内容については所説ありますが、中でもどれかひとつでも欠けたらお米を作ることのできない、「太陽」「雲」「風」「水」「土」「虫」「人」それぞれを司る神様が宿るという説は、この産業に関わる人々の間で強く信じられているようです。
せっかく頂くなら丸ごとのお米を!
現代の社会では、食品廃棄の問題やこれからやってくると言われている世界規模での食糧難など、食に関する不安や問題が数多くありますが、過去記事の「酵素玄米の優れた栄養価」でもお伝えした通り、必要最小限の量でも満腹感と豊かな栄養素を補うことのできる、玄米を小豆と塩で発酵させた酵素玄米の魅力をひとりでも多くの日本人に知って頂くことは、日本のお米そして食全体の未来を守る活動の一環です。そして、その一粒一粒のお米をはじめ、その美味しさをもたらしてくれる自然と人に心から感謝することを忘れずに、これからもずっと美味しいお米を食べましょう!